JR飯田線には、特に天竜峡-中部天竜間に所謂「秘境駅」が多く存在しているが、この区間は電車の本数も少なく一度途中下車したら
次の電車まで2~3時間待つ必要があり、しかも秘境駅の中には自動車では来ることができない駅もあり、飯田線の秘境駅めぐりは
結構ハードルが高いのが現状である。 しかし、JR東海では毎年4月と11月に金土日曜日の一部に臨時の観光列車として
「急行 飯田線秘境駅号」を運転しているので、これを利用すれば効率良く秘境駅をまわる事ができる。ただし、本来の秘境駅めぐり
である、ほとんど誰も利用しない駅に1人佇んで感慨にふける、という事はこの観光列車では難しいので、そこは妥協する事になる。
この「急行 飯田線秘境駅号」は全車座席指定車両で、しかもえきねっと等のインターネットを使った空席確認はできず、直接駅の
みどりの窓口で指定席の空席確認と購入をする必要があるが、JR町田駅のみどりの窓口で確認したところ4月12日(金)の指定券
が入手できたので、今回日帰りで飯田線秘境駅めぐりを行うことにした。
購入した切符は、町田→八王子→岡谷→辰野→豊橋→新横浜→町田、と一周ループする乗車券、飯田-豊橋間の急行・指定席券、
豊橋-新横浜間の新幹線自由席特急券で、合計10180円(ジパング倶楽部会員の3割引適用)であった。
(当日の行程。 GPSロガーを使って、ログデータから実際に移動した場所を表示。 青色が実際に移動した軌跡。)
この「急行 飯田線秘境駅号」の上り電車は飯田駅を 13:03 に発車し、7つの秘境駅に10分~15分ほど停車し、豊橋には 17:54 に
到着するので、まずは町田から横浜線で八王子まで行き、八王子から中央線に乗り、上諏訪始発で 9:22 発の飯田線直通電車に間に合う
ように自宅を早朝に出発した。 実は2015年10月に「秋の乗り放題パス」を使って、この上諏訪始発の電車に乗り豊橋まで7時間ずっと
同じ電車に乗車してさすがに退屈した事を思い出してしまった。
今回も飯田までは同じ電車に乗車したが、間隔が短い飯田線を長時間各停電車で乗車するのは、やはりつらいものがあった。
飯田には 12:19 到着。
自宅~天竜峡間の写真
飯田駅の近くで昼食をとり、13:03 発の「急行 飯田線秘境駅号」に乗り込む。 JR東海の客室乗務員も何人か乗り込み、結構この
観光列車を走らせるのに人件費がかかる、と思った。飯田を出発した時は車内はガラガラ状態であったが、次の天竜峡駅からは多くの
ツアー客が乗り込んできて車内はかなり賑やかになった。この観光列車は3両編成で私は1号車の指定席で、団体客は2号車と3号車
だったので、車内ではそれほど混雑せずのんびりと車窓を眺めてくつろぐ事ができた。
「秘境駅」の名付け親の牛山隆信さんは、秘境駅を「山中などにあり、駅周辺に人家や人の気配が全く感じられず、鉄道以外での到達が
難しい駅」と定義しており、自身のHPに秘境駅のランキングを発表している。 天竜峡から豊橋方面に向かって今回停車する秘境駅
の駅名とランキングは以下のようになっている。 この他、観光列車は途中の平岡駅にも停車する。
千代(ちよ 25位)、金野(きんの 7位)、田本(たもと 6位)、為栗(してぐり 16位)、
伊那小沢(いなこざわ 79位)、中井侍(なかいさむらい 13位)、小和田(こわだ 3位)
(飯田線秘境駅とランキング)
最初に停車した千代駅(25位)は、昔は天竜川の砂利を採取していたところで、次の金野駅(7位)は車が1台何とか通ることが
できるくらいの狭い道であるが、駅まで車で入ることができる数少ない秘境駅である。線路の向かいは急峻な岩場で、多くの乗客は
駅からすぐ近くにある橋のところまで歩いて、眼下に見える渓谷の流れを見ていた。 次の田本駅(6位)は豊橋方面にあるトンネル
脇の急な階段を上がるとホーム全体を見渡せるスポットがあり、ここからの眺めは良かった。 次の為栗駅(16位)から少し歩いた
ところに天竜川をまたぐ橋があるが、停車時間が少し短かったので、この橋を急いで往復して戻ってくるだけとなった。
千代駅~平岡駅間の写真
次に停車した平岡駅は秘境駅ではないが、「ふれあいステーション龍泉閣」というホテルになっており、宿泊が可能となっている。
駅構内には売店もあり地元の特産物なども販売しているが、この日は桜が満開となった駅の外にもテントを貼って秘境駅号の催事として
店を開いていた。 平岡駅ホームで地元の方々に手を振って見送って頂き、次に停車した秘境駅は伊那小沢駅(79位)で、この駅は
秘境駅では珍しく列車交換ができるように、上り下り用の2つのホームがある。この駅沿いには長野県で最も早く咲くカンザクラが
植えられていた。次の中井侍駅(13位)は、両側をトンネルに挟まれた急傾斜地にあり、その間に人家がある、というところである。
また傾斜地には茶畑が広がっており、「中井侍銘茶」というブランド名になっている。
秘境駅の最後は小和田駅(3位)で、愛知県と静岡県と長野県の県境に位置している。(駅舎自体は静岡県にある)
この駅は駅前には何ら施設が無くまた道路が通じていないため、この駅に来るには鉄道にたよるしかない。ここに駅があるのは、
以前は駅周辺に集落が存在したためであるが、1956年に完成した佐久間ダムによりそれらの集落は水没してしまった。
現在駅前には住居跡と製茶工場跡があり、製茶工場跡の下の道には佐久間ダム建設の際に転落したとされるミゼットの廃車が転がっている。
1993年に皇太子さま(2019.5.1付けで天皇になられた)ご成婚の当時、雅子さまの旧姓と字が同じことから、一時期多くの人が恋愛成就に
あやかろうとこの駅に訪れ、一時的にはかなり賑わったらしい。実際にこの駅で結婚式を挙げられたカップルもいて、その時の写真などが
今も駅舎に残されている。
中井侍駅~自宅間の写真
観光列車は小和田駅を 15:43 に出発して終点の豊橋に向かう途中、浦川駅に停車した。この駅は秘境駅ではなく何故この駅に停車するか
良くわからないが(下りの豊橋→飯田へ向かう飯田線秘境駅号ではこの駅は停車しない)、駅前には「鮎と歌舞伎の里 うらかわ」と書か
れたアーチがあり、天然鮎と歌舞伎で有名なところのようである。
浦川から終点の豊橋まではノンストップ(ただし単線なので列車交換の待ち合わせはあり)だが1時間20分ほどかかり、豊橋には 17:54
に到着となる。
豊橋 18:47 発の東海道新幹線ひかり530号は豊橋の次の停車駅が新横浜なので、新横浜には 19:55 の到着で横浜線に乗り換えて町田には
20:22 の到着となった。3月に青春18キップを使った時は、豊橋-町田間は約5時間半ほどかかったので、改めて新幹線の便利さを痛感
した。 今回の町田→町田までのループ乗車券は、帰りに町田駅に着いたとき初めて自動改札口を通したが、結局回収されてしまった。
(それまでは駅員に見せてスタンプを押してもらっていた)
(今回使用したキップ)
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